リハビリテーション科専門医は「家庭・社会生活へのアプローチ」や「リハビリテーションマネジメント」ができるので、地域包括ケアシステムにおいて重要な役割が担えると思います。


全国には、地域の中で
患者さんや地域のためになる仕事をされているリハビリテーション科医の方々がいらっしゃいます。

しかしその一方で、地域医療や生活期において、リハビリテーション科専門医が不足している現状があります。

日本リハビリテーション医学会が認定するリハビリテーション科専門医
2021年4月の時点で、全国で2,730名が認定されています。
リハビリテーション科専門医がカバーする領域は幅広く、その専門性と役割は他科と比べてきわめて広いと言えます。
日本リハビリテーション医学会発行「活動を育む医学4」:理事長ご挨拶より)

わが国の人口規模と高齢化の急速な進行を考慮すると、少なくともリハビリテーション科専門医4,000名必要と推計されています
(日本リハビリテーション医学会発行「活動を育む医学3」:理事長ご挨拶より)

地域の第一線でご活躍されている医師の方々でも、リハビリテーション医療についての知識や経験が不十分なことがあります。

地域医療、地域包括ケアシステムにおいて、リハビリテーション医療は非常に有用な考え方なのですが、なぜ医師の間で広まらないのか?

それには2つの理由が考えられます。


まずひとつ目は、
医学部学生時に多くの医師は「リハビリテーション医学」をほとんど教わらないということです。


80大学の医学部のなかで、生活まで系統的に教えられるリハビリテーション医学講座があるのは半分に満たないと思われます。
多くの医師はリハビリテーション科の考え方をほとんど教えられずに医師になります。
医師国家試験にもリハビリテーション科の問題は
ほとんど出ません。

私も学生当時、詳しく学ばずに、リハビリテーション医学の本質を知らずに医師になりました。医師になってしばらくしてから自主的に学び、「こんなに素晴らしい科があったんだ」とあらためて気づき、
リハビリテーション科に転科してから本格的にリハビリテーション医学を学びました。


2つ目の理由は、
医師になってからの研修でも、地域でのリハビリテーション医療を学ぶ機会が少ないことです。


医学生・研修医の多くは大病院で学び、生活の場でのアプローチをみる機会がほとんどありません。

超急性期である大学病院の中で、生活に即したリハビリテーション医療を教えることは困難です。

医学生の「地域医療実習」、臨床研修医の「地域医療研修」はありますが、

「地方の大病院」や「訪問診療をしていない無床診療所」で研修する場合があります。

「地方の大病院」では、地域独特の事情を学ぶことはできますが、そこでも大病院の医療を学ぶこととなります。

「訪問診療をしていない無床診療所」では、外来のみで患者を診療するスタイルです。通院できる人が対象であり、要介護状態で自宅で生活している患者さんを診る機会は非常に少ないですし、在宅での様子を垣間見ることはできません。


そのような大多数と異なるフィールドである「訪問診療をしている有床診療所」の当院では、大病院ではみられない地域医療や、地域リハビリテーション・生活期リハビリテーションの臨床現場を経験することができます。


専門職が、地域の現場を生活目線で経験することで、専門職として非常に幅広い視点幅広い引き出しを得ることができます。


そのことが直接的にも間接的にも、患者さんに対するより良い医療につながると信じています。


リハビリテーション医療の考え方を、少しでも多くの学生や研修医に知って欲しい。

リハビリテーション科専門医にならなくてもよいのです。


他科の専門医の方でも、リハビリテーション医療を少しでも知っていれば、医師としての業務のなかで、患者さんのより良い生活につながる医療が実践できると思っています。

 

当院では、医学部学生の地域医療実習やリハビリテーション医学セミナー、初期臨床研修医の地域医療研修を受け入れています。
2019.02 リハ医学生セミナーポスター1
リハビリテーション医学セミナーのリストに並んでいるのは大病院が多い中で、
地域の有床診療所として受け入れています。

2019.02 リハ医学生セミナーポスター2
随時、見学の相談も受け付けています。
このブログの右または下にある「ご意見・問い合せ」からも問い合わせ受け付けています。

森山リハビリテーションクリニック 院長 和田真一

2019年2月19日公開
2021年9月9日更新