「入院前と退院後… それは他院の看護師や訪問看護師がする事なのでは…?」
いいえ、これが本当の意味でのプライマリーナースだと考えます。
【入院前の看護】
生活を再構築するには入院前から関わらせていただくことが大切であると考えます。
地域包括ケアシステムの図をご覧になった事のある方はぴんと来るかもしれませんが、図の一番下植木鉢の受け皿に「本人の選択・本人家族の心構え」とあります。
当院でリハビリテーションをする選択と生活を再構築する心構えをしていただくためにも、入院前からのかかわりは重要であると思います。
生活の再構築はとても長く厳しい道のりです。あえて私は、覚悟を尋ねる事があります。
この覚悟があると、入院中の生活も、退院後の生活も違うものになると思います。
中には、漠然とした考えがまとまる方も居られます。
【退院後の看護】
退院後の看護とは…? ここが当院の看護の醍醐味の一つであると考えます。
退院後この患者さんは
「どうなってしまうの?」
「どんなふうに暮らしていくの?」
と疑問を持ったことのある方は沢山おられると思います。
当院を利用される患者さんの自宅は、当院から2㎞範囲内が多いです。
この利点を生かして、退院後の生活のご様子を確認するために、入院中に担当させていただいた看護師が訪問させていただくことがあります。
入院中の看護の評価にもなりますし、入院中には分からなかったことで看護が必要なことに対してアドバイスをさせていただいたり、退院後訪問指導として訪問看護師の方と情報共有したりもします。
たとえば、お薬の管理の仕方一つにしても「自己管理しないと家に帰れません」という話は結構良くあります。
管理と言っても、お薬を飲んでいる認識をつける事から始める方、袋で1週間分を管理するのか? ボックスなのか? カレンダーなのか?
カレンダーだとしたら、家でカレンダーをかけるところはどこなのか?誰がお薬をセットするのか?飲み忘れはどうするのか?お薬の袋を誰がどのように開けるのか?など
その方の生活や暮らしが見えることで、患者さん一人一人に適した看護が展開されていきます。
こういった看護の結果は退院後でないと見えない場合があります。
また、入院中には問題ないと思われたことも、生活に戻ると「変更が必要でした」ということもあります。
入院中から退院後に起こるであろう様々な問題に対して柔軟な対応ができるように、患者さんの対応力を高めるためにも、看護師が様々な事を想定できる力が必要だと考えます。
自宅を訪問させていただく事で、「生活とは」「暮らしとは」といった視点が加わります。その事により、看護の幅はぐんと広がります。
退院後に訪問させていただくメリットはまだまだあります。
ご家族にとっては、どんなに入院中に介護の練習を積んでも実際は「あれ?」と思う事の連続です。
訪問すると、ご家族から「確認したかったのですが、○○はどうしたらいいですか?」と話が始まる事もあります。
また、ご家族の頑張りを認める場としての活用もあると思います。
以前にご家族から「頑張っている事を認めてもらえるだけで、家族は頑張れることがあるのよ」
と言われたことがあります。専門職である私たちが、家族の頑張りを認める事は、在宅での療養生活を長く続ける秘訣だとも思います。
患者さんにとっても、同じ効果があると思います。
退院時は出来なかった事が、退院後生活の中でできるようになる事もあります。
「できるようになったよ」
と報告をもらう事は、看護師にとってもとても励みになります。
本当の意味でのプライマリーナースが、本当に必要だと思っています。
「入院前から退院後まで関わることができる有床診療所の看護師だからこそ、プライマリーナースになれるのかしら」なんて考える事があります。
森山リハビリテーションクリニック 看護師長 岩本由美子(認知症看護認定看護師)
当院の「入院中の看護」の特徴についてはこちらをご覧ください。
当院では、地域で生活する方にとって不足している必要なことを提供するという信念、
制度の狭間にある方にも適切な医療・介護・リハビリテーションを提供するという信念
があります。
同じ思いの方の仲間を募集しています。
2019年3月12日公開
2022年9月12日更新