東邦大学医学部4年生のリハビリテーション医学の講義に行ってきました。

私が担当した講義は「地域リハビリテーション」でした。

2019.07 東邦大学正門
「地域包括ケアシステム」と「リハビリテーション医療」をメインに講義しました。


「大事な国家試験などに関係ない」
と思われたら、最初から寝られてしまうなと思い、

講義内容はCBTや国家試験なども意識し、事前に「CBTや国家試験で、地域やリハビリテーションについてどのようなことが試験に出るのか?」調べました。


臨床医学が幅広く網羅され、
国家試験に準じている”Year Note”という本は、広く学生が使っていると思われますが、「地域」や「リハビリテーション」のことは載っていません。

さらにほかの本を探すと「レビューブック公衆衛生」というCBT、国家試験対策の本の中に見つけました。

「高齢者保健」という単元の中に「地域包括ケアシステム」

「障害者福祉」という単元の中にICF」「リハビリテーション」

が、項目立てて記載されていました。

つまり、「地域リハビリテーション」は「公衆衛生」という括りになっていました。


公衆衛生学修士でもあり「地域リハビリテーション」の臨床医学をしている私としては、少し違和感のある括りでした。
たしかに、リハビリテーション医学は
公衆衛生学的な側面も持っています。

しかし、リハビリテーション医療は直接患者さんにかかわる臨床医学であるという面を医学教育に浸透し、臨床医学の教科書の中に項目立てをしていかないと、

「リハビリテーションって、臨床医は何をするんですか?」

という認識の医師が多いままになってしまう気がしています。


今回おこなった講義は、地域包括ケアシステムやICFの理論を踏まえて「リハビリテーション医療の臨床」
を意識した内容にしました。

 

教室は、自分が講義を受けていた20数年前に比べ、リフォームされ、きれいになり、視聴覚設備も充実していました。

リハビリテーション科医として感じたのは、教室が前から後ろへなだらかなスロープになっていたことです。
昔は階段教室
でした。


講義の中で、“ICF” 障害の「医学モデル」「社会モデル」の話をした際に、

「社会モデルでは、障害は主として社会や環境によって作られた問題と考えます。社会が、様々な障害のある人を理解し、社会全体の共同責任で、障害のある人の社会生活の完全参加に必要な環境の整備

をおこなうことで対処します」
などと説明し、

2019.07 東邦教室
「たとえば、この教室。昔、私が学生のころには
教室の中に階段がありました。

しかし、今、この教室の通路は幅広く、1/15程度の傾斜のなだらかなスロープになっていて、

車いすの教員、生徒でも講義への参加ができるようになっています」
と、身近な教室も「社会モデル」の考え方で対処されてきていることも伝えました。


このように説明してみると、リハビリテーション医学はやはり公衆衛生学の要素も含んでいるのだと思いました。
それでも、リハビリテーション医学は、患者さんに直接かかわる臨床医学です。


「他科の専門医の方でも、リハビリテーション医学を知っていれば、
患者さんのより良い生活につながる医療が実践できます」

というメッセージで講義を締めくくりました。


森山リハビリテーションクリニック 院長 和田真一

補足:”Year Note”の中では、「老年医学」の中に「高齢者リハビリテーション」として1ページだけ載っていますが、国語辞典のような定義が出ているのみです。