医療や介護保険で提供するリハビリテーションには、
当然ながら「目標」と「期間」の設定が必要です。


しかし、
病院から在宅に帰ってきた当初は、
厳密に具体的には
「目標」と「期間」を決められないこともしばしばあります。

なぜなら、
退院直後は日常生活が確立しておらず、
生活しながら、いろいろな困難をあらためて感じることが多いからです。

当初は漠然とした目標でも、
徐々に本人の状態や日常生活をみながら、
具体的な目標を絞り込んでいくことになります。

目標設定で大事になるのが、
本人にとっての
「困難度」と「重要度」
です。

「困難度」が低く、短期間で達成可能な目標でも、
本人にとって「重要度」が低ければ、
あえてリハビリテーションでの目標にはなりません。

「重要度」がいくら高くても、
「困難度」が高すぎて現実的でなければ、
リハビリテーションの目標になりません。

リハビリテーションで達成可能な「困難度」
本人の価値観で「重要度」が高いもの
リハビリテーションの目標になります。


期間については、

当初に大まかな期間設定をして
「保険で提供するリハビリテーションには終わりがあること」
を説明しますが、

具体的な目標や期間については
1
3カ月ごとの評価を踏まえて、
カンファレンスや本人・家族との相談で
決めていくことになります。

最初に決めた期間が変わってしまうのは、
この時期の回復に、
身体機能以外の要素も大きくかかわってくるためです。

たとえば、
病状の不安定性、新たな病気発症、心理面の変化などの個人因子や、
周囲の協力者の病気発症、家族構成の変化などの環境因子などです。

一進一退しながら進めていくことも多いです。


生活期で
陥りやすい問題として、
「リハビリテーションの目的化」
「活動・参加につながらない機能練習」
などがあります。

これらは、
障害のある方の主体性を尊重する立場を取れば、
適切な方向性をとることができると考えています。



「重要度」が高いが「困難度」も高い目標を、
スモールステップの目標に分けて
達成していった一例を以下に示します。


60
歳代女性、元々専業主婦の方でした。
主婦業の合間をぬって吹き矢や絵手紙、山登りなどの趣味活動で
毎日を忙しく過ごされていました。
脳出血で左片麻痺を患い、
1ヶ月間の急性期治療、3ヶ月間の回復期リハを経て、自宅退院。
退院時、室内移動は車椅子、
左手はほとんど使用出来ず、
家事はご主人が行っていました。


患者さんは退院時二つの目標を持っていました。
車椅子を一切使わずに歩けるようになること、
両手で吹き矢が出来るようになること
でした。


理由は
「車椅子を使いたくないのは
夫に車椅子をおさせてはいけないと思ったから、
吹き矢を両手でやりたいのは、
吹き矢を教えてくれた恩師に、両手でやっている姿を見せて驚かせたいから」
本人にとって「重要度」の高いものでした。


退院後は訪問リハビリテーションをおこないながら、
明確な目標をスモールステップに分けて
練習に取り組まれていました。

まず
歩くためには長い時間立てなければいけない、
そのために
リハビリテーションでどこまでなら安全に立っていられるかを確認し、
そこから立つ自主練習や、
立って野菜を切るなど、
患者さん自身で考えおこなっていました。

手に関しても、
吹き矢を構えるには左手を90°挙上して保持しなければいけない、
そのために左手で机を拭く、
洗濯物を両手で持つなど
様々な工夫を生活に取り入れていました。

その結果、退院から1年半、
車椅子は使わず、杖を持って一人で歩けるようになり、
三輪自転車に乗って買い物が行けるまでになりました。

また両手で吹き矢が出来るようになり、競技を楽しめるようになりました。


本人の価値観で「重要度」が高い目標

達成可能な「困難度」

スモールステップに分けて、

目標を見直していったケースと言えます。


著者:森山リハビリテーションクリニック院長 和田真一
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