脳梗塞や脳出血後、長期間経ったときに陥りやすい問題として、
「リハビリテーションの目的化」
「活動・参加につながらない機能練習」
などがあります。
より良い生活の再構築に手を付けずに、機能練習に長期間固執してしまうケースです。


身体機能回復を図るのは
もちろん重要ですが、

在宅に帰ったあとの生活期では、病気の特性として機能回復の限界があります。

生活期では、入院中と同様な
「医療者主導」のリハビリテーションのままでは良くならないことが多く経験されており、
生活期に目標が明確でない機能訓練を中心としたリハビリテーションが漫然と実施されてきたこと

は問題視されています。

 (水間正澄:これからの生活期リハビリテーション.  MEDICALREHABILITATION 217: p1-7, 2017)

 (近藤国嗣:脳卒中生活期リハビリテーションの現状と課題.  MEDICALREHABILITATION 236: p28-35, 2019)


これらは、障害のある方の「主体性を尊重する」立場を取れば、適切な方向性をとることができます。
(主体性とは何なのか?についてはこちら
脳損傷後片麻痺で発症から長期間経過している場合は、基本的には本人の主体性を第一に考え、保険で提供できるリハビリテーションに限らず、幅広いリハビリテーションアプローチを念頭に考えます。

 

この時期に生活の場で展開される在宅リハビリテーションでは、リハビリテーション専門職が訪問をして、単に機能練習、日常生活動作練習をおこなうだけではありません。
本人の現状の身体面・心理面の評価と予後予測をもとに、本人とともに主体的な活動・参加の拡大を見据えた目標を設定し、支援内容の計画立案とその実施をおこない、
状況に合わせて13カ月ごとに更新し、適切なサポートやマネジメントをしていきます。


しかし、発症から長期間経過していても
「機能練習や基本的な動作練習が必要」
という場合もあります。
「より良い生活に向けて、リハビリテーション治療により改善できる」
と判断できる状態・状況であれば、医療保険の外来や入院を含めた適切な場でリハビリテーションをおこないます。


脳卒中発症から長期間経過していても保険を利用した機能練習や基本的な動作練習の対象になり得るのは、
中枢性神経麻痺の痙縮や失調の増悪によって
生活動作に新たな影響が出てきた場合

障害がありながらも自分流の動作で頑張って生活してきたことによる二次障害が危惧される場合
・高次脳機能障害の改善に伴って新たな活動の習得が見込める場合
などです。

新たに「ボツリヌス療法の適応」だと考えられることもあれば、
「装具を修正したほうが良い」「新たに装具を作製した方が良い」
と考えられることもあります。
装具の修正・作製やボツリヌス療法による身体機能変化に合わせて、入院や外来や訪問リハビリテーションによる動作指導が必要になることもあります。


脳卒中発症から長期間経っている場合でも、障害のある方が主体的になり、
「その人のより良い生活に向けて、リハビリテーション治療により改善できる」
ことが予測できれば、予測される期間と到達目標に合わせてリハビリテーション治療をおこなうことができます。

発症から長期間経つと、セラピストに「やってもらう」という依存的な考えではうまくいかないことがほとんどです。
「リハビリテーション自体が目的」となることや
「活動・参加につながらない機能練習」をすることによってセラピストとの依存関係を形成するのではない、本人が主体となるアプローチが必要になります。

それらを診断できて、適切なリハビリテーションアプローチをコーディネートできるのがリハビリテーション科専門医です。

当院に外来受診していただければ、適切なリハビリテーションアプローチにつなぐことができます。


森山リハビリテーションクリニック 院長 和田真一
2019年9月22日公開
2022年8月1日更新