訪問や通所リハビリテーションは、入院リハビリテーションのように退院という節目や外来リハビリテーションのように期限が決められていないため、長期間関わりを続けていることが多く見受けられると思います。

しかし、ただ漫然と続けるのではなく、
訪問リハビリテーションはどうなったら終わりになるのか?
訪問リハビリテーションの修了についてお話しさせていただきます。


【「修了」と「終了」の違いについて】

訪問リハビリテーションの「修了」は

  • 目標達成
  • 役割の定着
  • 活動的な生活習慣や外出の定着
などで終わることです。

「これまでのリハビリテーションの成果を修める」「本人の生活が修まる」という意味合いで「修了」という言葉を使うようにしています。

一方、入院や施設入所など上記以外で終わることの「終了」と言葉の使い分けをしています。


【本人と療法士の依存関係の転換】

その方の疾患の特性として機能回復がほとんど望めなくなった時期でも、本人は機能障害の回復に期待が大きく
「元のように動けるようになりたい」
「麻痺が治れば○○ができる」
「機能障害を治してほしい」
と療法士に依存し、療法士もそれに応えようと機能面の訓練ばかりになり、「終わると機能悪化してしまうのではないか?」という不安から修了できず、「本人と療法士の依存関係」が構築され、長期間、訪問リハビリテーションを継続するケースはよく経験されるのではないかと思います。

まず、療法士が本人との依存関係を転換し、本人が主体的となる関係づくりが重要になると考えています。


【主体性を引き出すには】

リハビリテーションの目標は初めから具体的な目標が挙がるとは限りません。
本人が「自分で決める」「考える過程」が重要であり、本人が経過を振り返り、自分の言葉で療法士に伝えられるように働きかけます。
本人が考えた目標をスモールステップにして、ひとつひとつ達成することの積み重ねが自信につながり、自分で決める「主体性」を引き出すことにつながっていくと思います。


療法士の関わり方は、「本人が考えること」を意識した働きかけが重要になると思います。本人からすぐに目標が挙がらなくても、少し時間をおいて本人に考えてもらう「間」や「待つ」姿勢が必要です。
本人の心理面に配慮し、本人の良くなっていることや達成できたことなどの経過を共有し、本人から「〜したい」「〜しようと思う」など、主体的な言葉が出るように肯定的な問いかけを心がけることが重要になると思います。

また、療法士は評価や予後予測をもとに、より具体的な実現可能な目標を本人と共有することを積み重ねていきます。

「歩きたい」という漠然とした目標から「どこに」「どの様な手段で」「誰と」を一緒に考え、
「近所の300M先のコンビニまで、T字杖歩行で、家族の見守りで行けるようになる」
「それにはまず、玄関の上がり框を1人で昇降できるようになる」
というように目標を具体的にしていくことで、具体的な練習につながっていきます。

2020.12 訪問リハ玄関昇降

決して、訪問リハビリテーションは修了ありきではなく、本人らしい生活習慣の獲得などの成果を修めた結果として「修了」するものです。
継続する必要性があるケースもあります。継続の必要性、訪問頻度、訪問時間などはリハビリテーション会議で検討することが必要になります。


本人が「やってもらう」から「自分でやってみる」主体的な姿勢への転換が訪問リハビリテーションを修める第一歩になるのではないでしょうか。


(引用)中島鈴美、大島豊、藤田真樹、長谷川幹:主体性をひきだす訪問理学・作業療法.
 第1版、日本医事新報社、2019


森山リハビリテーションクリニック 介護事業部 理学療法士 大島豊
2020.07 訪問リハビリテーション
2020年7月27日公開
2021年4月29日更新