「デイケアとデイサービスは何が違うんですか?」よく混同されることが多いと思われます。
デイケアは「通所リハビリテーション」
デイサービスは「通所介護」
制度的に人員基準や設備基準などが異なることは当然です。
ここでは主に目的とマネジメント(だれがマネジメント役なのか?)についての違いを考えます。
【目的の違い】
厚生省が制定した省令の中では、デイケアとデイサービスの基本方針の前半部分はまったく同じです。
基本方針の前半は
「要介護者が可能な限り居宅で、能力に応じ自立した日常生活ができるよう 生活機能の維持又は向上を目指す」です。
違いは後半部分のみです。
デイケアでは
「必要なリハビリテーションを行うことにより、利用者の心身の機能の維持回復を図るものでなければならない」とあり、リハビリテーションが中心です。
一方、デイサービスでは
「必要な日常生活の世話及び機能訓練を行うことにより、 利用者の社会的孤立感の解消及び心身の機能の維持並びに利用者家族の身体的及び精神的負担の軽減を図るものでなければならない」とあり、日常生活の介護が中心です。
デイケアでも日常生活の介護は受けられ、デイサービスでも機能訓練が受けられるので混同されやすいですが、本来の基本方針で力を入れている目的が異なります。
【マネジメントの違い】
・デイケアのマネジメント
デイケアでおこなうことは「リハビリテーション」が中心なので、
外来や入院などの医療保険のリハビリテーションと同様に、利用者の心身機能の維持向上を意図した目標に向かって、常に適切なアプローチがおこなわれているか、継続の必要性があるかを検証し続けるマネジメントになります。
適切な目標に対してデイケアの役割が達成され、ほかのアプローチへの移行が可能になり、必要性が乏しくなれば修了になります。
そのため、デイケアの対象者は、居宅要介護者のうち、主治医により必要性があると認められたものに限るとされています。
2021年度介護報酬改定では、それまでのリハビリテーションマネジメント加算Ⅰが基本報酬に包括されたことにより、デイケアでは医師によるリハビリテーションの指示が必須化されたといえます。
デイケアは、医師による適応の判断が必要だからこそ、医師のいる施設のみ開設可能になっています。
・デイサービスのマネジメント
一方、デイサービスで行うことは「日常生活の介護、相談、助言などの支援」が中心です。
利用者の社会的孤立感の解消、心身の機能の維持、利用者家族の身体的・精神的負担の軽減を意図するため、対象者は居宅要介護者であればよく、医師による適応の判断は不要で、通所や訪問のリハビリテーションのマネジメントとは異なります。
デイサービスは制度的には医師のいない施設で開設可能で、心身機能の維持向上へ向けた取り組みは、リハビリテーションではなく機能訓練と呼ばれています。
機能訓練は、通所介護事業所の職員とリハビリテーション専門職が連携してマネジメントをすることが推奨されています。
【マネジメントの責任者役の違い】
導入に際し、デイケアでは、医師とケアマネージャー(介護支援専門員)の協働が必須になります。
それはなぜでしょうか?
「介護保険サービス」であり、「リハビリテーション」だからです。
まず、デイサービスなどの「介護保険サービス」はケアマネージャーが中心となってマネジメントする仕組みになっています。
一方、入院・外来などの「リハビリテーション診療」では、医療保険の枠組みで医師が指示を出してマネジメントする仕組みになっています。
医師が「リハビリテーションのマネジメントの責任者役」です。
デイケア(通所リハビリテーション)は、
「介護保険サービス」と「リハビリテーション」という2つの側面を持ち合わせているので、
リハビリテーションのマネジメント役の医師と、介護保険サービスのマネジメント役のケアマネージャーの協働が必須になります。
リハビリテーション適応やリスク管理に関する医師の指示と、
利用者の生活の全体的なケアプランに関するケアマネージャーのアドバイスを融合させて、
リハビリテーションの導入や意味合いを考える必要があります。
だからこそ、デイケアではリハビリテーション会議が重要になります。
利用者にかかわるすべての職種が情報と問題の共有を図り、目標とすべき活動と参加に対して、
デイケアだけで解決するのではなく、それ以外の時間・場所にて、
利用者・家族、かかわる専門職のそれぞれが行うべき役割と内容を決定して実行することが理想的です。
森山リハビリテーションクリニック 院長 和田真一
参考文献)
- 厚生省:平成十一年厚生省令第三十七号「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準」第92条 通所介護、第110条通所リハビリテーション
- 介護保険法:第8条第7項 通所介護、第8条第8項 通所リハビリテーション
- 厚生労働省:第180回社会保障審議会介護給付費分科会(資料1)通所介護、(資料3)通所リハビリテーション